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「子供の為の空手スクール」は子供を教えている空手のスクールですが、表面的には「空手の為の子供スクール」と変わりません。「空手の為の子供スクール」とは空手を子供に普及するために行われているスクールのことです。空手が発展していく為の、普及・強化・教育は他の競技と同様に大事な3本柱になります。ただし、今の子供は昔の子供とは違っていることに気がついて欲しいのです。
子供のトレーニングを指導してみると(この言い方も本来好ましくはないのですが)、動きに多様性がみられないのです。得意な動きは得意、不得意な動きは全くできない、つまり練習の中で経験している動きはできるが、練習の中で経験していない運動はできないということです。
以前、月井先生に伺ったことがあるのですが、未開発地域の子供は「尻歩き」をさせるとすぐにできると言われていました。これはその地域の子供が「尻歩き」を練習しているのではなく、普段の生活の中で動きに多様性があるのです。その理由を簡単に言ってしまうと、良く遊んでいるということになります。彼らは野山を駆け上り、子供同士で遊びを工夫します。この結果、新しい動きでも、過去の動きの中から共通点を見出し、相違点を加えていきます。過去の動きが多ければ多いほど共通点、相違点を見つけやすくなるのです。これは感覚的な経験知なので人が言葉で教えることができません。
昔の日本の子供もこの感覚的な経験知は高かったのです。しかし今の日本の現状では、昔の子供と同じ環境で遊ぶことはできません。昔の子供は、空手を習うことで普段の生活から得ることができない動きを学び、更に動きの多様性を加え、これを普段の生活に取り込むことができました。今の子供が空手を習うとき、昔の子供を前提とした練習だけで上手くなることはなかなかに難しいことといえます。
指導される先生たちが昔の遊びの代わりとして、子供たちに空手の中で動きの多様性を教えていかなければならなくなっています。そんな難しいことができるのかとお思いかもしれません。要はできるだけ空手の中に遊びの要素を取り入れて欲しいのです。そうすれば空手は「遊戯」となり、更には「遊技」となっていくはずです。21世紀の子供にとってより良い指導となっていく手がかりとなっていけるのではと思います。
(JK Fan 2005年7月号
永田一彦連載コラムより)
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